それから私はバンドメンバーと合流して
全体の通しを聴いてから、個々に打ち合わせ。
バスドラはここを強くだとか
キーボードはこっちの音にしてだとか
ギターはもう少し細かく音入れてだとか
偉そうに、細かく指示をした。
………そうしないと
「━━ってことだから、よろしくね。」
あの秘密計画を長曽我部さんにバレずに
一人ずつ話すことはできないから。
「じゃあ俺はピアノを運ぶ役ってこと?」
「お願いします。」
なーんて、細かいことまで。
そして私は最後に佐藤さんのところへ向かった。
「ね、ピアノはどうするの?
さすがにバレるでしょ?」
「もうそれは藤森さんの名前使って
新しい演出で使うってことにした。」
「藤森さんって…
キーボードの人がピアノ弾くなんて
そんなの通用したの?」
「………まぁ、なんとか?」
…おいおい、大丈夫かよ…
まぁでも無茶頼んでんのはこっちだから
仕方ないか………
「まぁ、藤森さんはピアノの練習
しなきゃいけなくなるわけだし
そうしとけばカモフラージュになるでしょ?」
「それもそうだね。
っていうかもうすぐ10月終わるけど
レコーディングっていつ?
他のシングル曲は撮り直さないんでしょ?」
「うん。
えーとね、11月3日。
その日美鈴ちゃん休みなんだ。
ほら、一高文化祭でしょ?
長曽我部さんがあえてそこ休みにしたから。
向こうの社長も17時くらいなら
時間調整できるみたいだから。」
「ふーん、わかった。
発売日が20日なのに余裕ないね。」
「まぁでもなんとかなりそうでよかったね。」
本当にみんなに迷惑をかけてるけど
それでも素敵な終止符を打てそうで
よかった、本当に。


