「………あんまり、私が言えたことじゃなかったな。」
ナンバーワンなんて、目指したことはない。
いつもどこかで諦めてた。
私なんか、って。
ナンバーワンにならなくても別に構わない。
届く人に届けば良い。
………それでも、どうか長曽我部さんがいるうちに
私はナンバーワンというものを
とりたくなってしまっていた。
長曽我部さんが望むなら。
……私は、決して負けてられない。
あんな上手な子がデビューするんだもん。
負けられない。
「…早く歌を歌いたい。」
ライブか待ち遠しい。
年末が待ち遠しい。
レッスンでも良い。
レコーディングでも良い。
早く歌を歌いたい。
「明日はレッスンがある。」
「………そっか。
じゃあいっぱい歌わないと。」
もうすぐ迎える最後と
その次の始まりのためにもね。
「………にしても、小春ちゃん
本当に上手だったな…」
「だろ?
なのに水木先生断るんだよなー。」
「ただ単に好みの問題だと思うけど。
ああいう今っぽい子
水木先生は嫌いだよ。」
「………ガキか。」


