居場所をください。




「水木先生のレッスンは最初の一時間は

声を出させてもらえない。

ウォーミングから始まる。

それが終わってから徹底的に発声をして

三時間のレッスンだとしても

曲を歌えるのは一時間もない。


水木先生は必ず基礎を求める。

そして歌声の中の心を求める。


…でもね、水木先生のレッスンだけが

すべてではないと思う。

みんなが水木先生の言うことを聞いていたら

はっきり言ってみんなあんまり差はないよ。

いいじゃん、小春ちゃんは小春ちゃんで。


あとは小春ちゃんの頑張り次第だよ。

グランプリをとった小春ちゃんはさ

カラオケ程度の歌と言われて悔しいでしょ?

私を見返したいなら頑張るしかない。


良い歌詞を書いて、歌が上手ければ

売れるとは思うけどね。私は。


でも私はそんなほかの人と一緒じゃ嫌。

私は私のやり方で一番を目指す。

オンリーワンも、ナンバーワンも

どっちも譲ることができないから。


あとは小春ちゃんが決めることだよ。


………長曽我部さん、時間平気?」


「…え、あ、あぁ…そうだな。

そろそろ行こう。」


「じゃーね、小春ちゃん。

頑張ってね。」


私はそういって、スタジオを出た。