居場所をください。




そしてその歌が終わってから

長曽我部さんは口を開いた。


「どうだった?小春の歌。」


はじめて聴いた小春ちゃんの歌声。

さすがオーディショングランプリ。


「すっごい上手だった。」


こんな子がこれから出ていく。

私はのんきに休んでる場合じゃない。

これではすぐに追い抜かされてしまいそう。


「それだけか?感じたこと。

俺はお前に小春の実力を見せるために

ここまでつれてきた訳じゃねーんだけど。


………本当は小春にも水木先生をつけたかったけど

水木先生は小春じゃ不服らしくてなー。

あっさりと断られたんだよ。

ほかの人で鍛えられてからにしてくれって。


俺の耳じゃ、小春のダメなところはわかんねーし

とりあえず空いてた柚木先生をつけたんだけど

いまだにまだ水木先生は首を縦には振らない。

だから美鈴のアドバイスを聞きたい。」


「………私なんかが思ったことでいいの?」


「当たり前だ。

美鈴も先輩には世話になってるだろ。

ここの事務所の人に限らず。

下のやつは上の人に教わる。

上の人は下に越されないように必死になる。

お互いのためになるんだよ。


だから今は美鈴の意見を聞きたい。」


「………私が水木先生に言われてきたことだからね。

あんま偉そうとか思わないでよね。」


「ちゃんとやってきた美鈴のことを

偉そうだなんて思わねーよ。」


長曽我部さんはそう言うから

私は小春ちゃんに近づいた。