居場所をください。




━━━━━━━━━━━━━━・・・・


レコード会社を出て数分

そこまで離れていないマンションへは

すぐに到着した。


「………貴也いるかな…」


「いるよ。さっき確認したし

美鈴ちゃんが戻ってくるの待ってるから

大丈夫だよ。」


「う、うん…。」


私は覚悟を決めて車から降り、

エントランスへ入るために

キーケースを取り出した。


久しぶりに開けたキーケース。

そこにはあるはずのない鍵がついていた。


「………どうして…」


返したはずの長曽我部さんちの鍵が

また私のキーケースの中にある。


………そういえば…

家出して、起きたら枕元にキーケースだけ

置かれてたな…

あの日、私が寝てるときに長曽我部さん

亜樹んちに来てたらしいし…

長曽我部さんが戻した、ってことだよね…?


「どうかした?」


「………ううん、なんでもない!」


たったそれだけ。

たったそれだけのことだけど

私の目から涙が溢れそうだった。


"ここにいていいよ"

言葉はなくても、そう聞こえた気がした。


「お前の居場所はここ。」

昔、そう言ってくれた長曽我部さんが

また私にそう言ってくれた気がした。

たったこれだけのことだけで。


「………はぁー」


思いっきり息を吐き、

顔をあげ、口角をあげる。


私はもう、ひとりじゃない。


「………佐藤さん、荷物ありがとね。」


「いえいえ。」


たくさんの荷物を持ち、

私はやっとエントランスを開けた。


たった数日離れてただけだけど

仲村さんの顔を見るのも

なんだか懐かしく感じる。


「おかえりなさいませ。」


「御苦労様です。」


仲村さんに挨拶をし、

エレベーターへと乗り込む。

あと数分後には貴也に会える。

不安もあるけど、早く貴也に会いたくて

自然と早足になっている。


高速エレベーターはあっという間に19階へつき

私は自分の家のドアの前で深呼吸し、

やっと部屋の鍵を開けた。