それから私は椅子に座り、
窓からの景色を見ていた。
ビルの隙間から見える夕陽を
ずっと見ていた。
「美鈴ちゃん、どう?」
そこへ、ここの社長が来た。
「……全然で。
せっかく部屋も貸してもらってるのに
すみません…」
「そう…
…………あ、夕陽を見てたの?」
「え?あ、はい。
ビルとビルの細い隙間からですけどね。」
「ここに夕陽が当たるのは
この時期だけなんだよ。
ほかの季節じゃまず夕陽を見ることはできない。
うまい具合に、ちょうどビルとビルの間に
太陽が来てくれたから。
だから美鈴ちゃんは運がいいね。
ほかの人はまず気にすることがない
ビルとビルの間に
綺麗な夕陽を見つけることができて。」
「………いえ、違います。
本当は暗くて光も当たらないところで
誰も見ていないところだけど
運よく太陽に見つけてもらえたんです。」
そんな夕陽が儚くて
ずっと見ていると涙が出そうになる。


