そしてまた機械に向かって
私は頭を抱えた。
「やっぱり深みをいれるなら
低温の音は入れないとだよねぇ…」
「そうだねー。
ベースとかバスドラム入るだけで
音の重なりが深くなるよね。」
「…ちなみにだけどさ
これでそういう音作れると思うんだけど
CDの音はどうしてるの?
もしかしていつもこれ?」
「はは、まさか。
美鈴ちゃんのはちゃんと楽器使って
レコーディングしてるよ。」
「そっか、よかったー。
生の音じゃなきゃやだったもん。」
……待てよ?
私がすべての楽器の譜面も
考えなきゃならないってこと…?
絶対無理だよ、そんなの……
そんな才能ないよ……
「はぁーどうしよう…」
「……やっぱり誰かにお願いする?」
「やだ。」
「じゃあ悩んでる暇なんてないよ。
とにかくいっぱい音を出してみよ。」
「……うん。」
頑張るしか、ないか。
今までずっと頑張ってきてくれたんだもん。
負けてられないよ。


