佐藤さんが私の方に手を回し、
180度回って、また車へと歩き出した。
「でも、それ全部どうするの?」
「サインはダメ。
だから直筆でなにか一言かくとか
絵を描くとか
あとはプリクラ貼るとか。
全部違う内容にしてね。」
「え!うそ!え、ほんとに?」
「本当に。」
…それなら全部サインでいいよ…
なんでそんな大変な道を選んだんだ…
「あとで美鈴ちゃんと貴也の分
わけておくね。」
……ほんと、たまに鬼なんだよね
佐藤さんも…………
「これも人気向上のためだしね。」
「…了解です。」
仕事なら仕方ないさ。
これも仕事なら…………
…………はぁ。
「…………あれ?車が違う。」
お店の裏側にある、亜樹んちの駐車場には
いつもの大きい車ではなく
四角い車が止まっていた。
「今日は俺も休みだしね。」
「あ、佐藤さんの車ってこと?
社用車じゃなくて」
「そういうこと。
はい、乗って。」
「あ、ありがと。」
「スモークが薄いから
外の視線には気を付けてね。」
「はーい。」


