「実はね、私
和也に腕掴まれて覚醒剤、打たれそうになって」
「……覚醒剤?」
「うん。
でね、それが私すごくショックだったみたいで…
和也とはずっといい思い出なんかなかった。
…………そう思ってたんだけど
子供の頃、私が泣いたときに慰めてくれたのは
いつも和也だった。
和也はいつも私を外に連れ出してくれた。
私と和也はいつも一緒だったの。
今思えば、私を捨てた親を恨むようになったのは
中学入ってからで、ちょうど和也が
私を抱き始めた頃だった。
ずっと一緒にいた和也が私が嫌がることをして
私は施設にいるのがすごく嫌になった。
そこに藍子も来てさ。
それからだったな。施設が嫌になったのは。」
「…………なるほどな。
あいつは美鈴にとって兄弟みたいなもんなのか。」
「うん。
私ね、和也に抱かれてるとき
嫌だったけど、怖くはなかったの。
だけど…薬打ったあとの和也は
私の知ってる和也じゃなくなってて
和也の目が、すごく怖かった。
あの目で見られて、腕掴まれて
…………薬、入れられそうになって
それがすごく怖かったんだ。
その直前に長曽我部さんが来てくれて
助けてくれた。
長曽我部さんが来てくれたから
すっごい安心できて…だけどね
長曽我部さん、私のマネージャーやめて
前の奥さんとまた結婚するんだ。
ずっと持ってた長曽我部さんちの合鍵も置いて
長曽我部さんちに置いてあった荷物もって
もう、長曽我部さんに甘えちゃダメだって
そう思ったら昔の嫌な記憶が戻ってきて
…私は独りじゃない、そう自分に言い聞かせて
それで高橋に電話したの。ご飯いこうって。
なのに夏音に車にのせられてさ
あんなことがあって…………
長曽我部さんに甘えちゃいけない
そう思うのに私は長曽我部さんに助けを求めてた。
そしたら長曽我部さん、昨日は
前の奥さんと約束があったのに
本当に助けに来てくれてさ。
邪魔しちゃいけないって思って
貴也と家に帰ったの。」
高橋は、私が淡々と話すことを
無言で、ただひたすら聞いてくれた。


