居場所をください。




「そばにいるだけが優しさじゃない。

愛してるからこそ、見守ることも大事。

親のできることは基礎を作ることだけ。

あとは自分で決めていく。

その決断力と強さはちゃんと備わってるって

信じてるから。」


「…………亜樹のこと?」


「そう。

私たちは亜樹にね

勉強は怠るなって言ってきたの。

絶対無駄にはならないって。

学校で教わる勉強が日常使うかはわからない。

だけど、それは学歴として

必ず自分の強い武器となるってね。

だけどそれだけじゃだめでしょ?

友達を作って、友達に付き合うこと

仲良くすることもしなきゃ

人間関係は学べない。

だから学校では勉学と人間関係を

しっかり学んできなさいって、

小学校はいる前から言ってたの。

だから今はなんにも口出しはしてないよ。

ルールは守りなさい、人には優しくしなさい

そんな基本的なことも、言ってたのは小学生まで。

亜樹の将来のことも、なにも言ってない。

だけどきっといつか

お父さんの会社を継いでくれるって

信じてるから。」


「…なんか、素敵だね。」


「だからね、そばにいるだけが愛じゃない。

信じて任せることも大事。

美鈴ちゃんもね。」


「長曽我部さんのことを?

………でも、信じて任せるって

私の立場からじゃとくに…」


「そうだね。

美鈴ちゃんはどちらかといえば

任せられる方だもんね。

だから、たとえひかるくんがそばにいなくても

ちゃんと見ててくれるって覚えてて。

ひかるくんは決して見放したりしないから。」


「…………うん。」


「不器用で素直じゃないけどさ

でも、美鈴ちゃんのために

自分のなにかを犠牲にできるひかるくんは

本当に美鈴ちゃんのことを

愛してるんだよ。

確かにひかるくんはなにかを犠牲にして

美鈴ちゃんのことに必死になったかもしれない。

だけどその代わりに、なにか大きなものを

得ているんじゃないかな。

そうやって選択していくことが

人生なんじゃないかな。

美鈴ちゃんだって、いろんなものを失って

ここにいるんだろうしさ。


なにかを犠牲にしてもいい

そう思える人がいるひかるくんは

本当に幸せなんだと思うよ。」


「…………そっか。

私が長曽我部さんにしてあげられることなんて

なんにもないけど…いいのかな。」


私は長曽我部さんに

なにかしてあげられるだろうか…