長曽我部さんが私のマネージャーではなくなる。
たったそれだけのことなのに
私はかなり落ち込んでいた。
私が長曽我部さんの妹であることも
長曽我部さんの下で働いてることも
変わりはないのにね。
こうやって私にカギを渡してくれたのだって
私が妹だからであって
担当のやつだからとか、そういうのじゃないはず。
なのに…
「なんでこんな寂しいのかな」
エレベーターの中でそうポツリと
独り言を発すると
エレベーターが到着した。
エレベーターを降りてしばらく歩いた、そこ。
デビューする前に住み着いていたことが
なんだか遠い昔のようで、懐かしい。
ここにはよく来てるのに
今更あの頃のことを思い出すよ。
そんなことを思い出しながら
私は久しぶりにここのカギを開けた。
あんまり来なくなったもんね、最近は。
………久しぶり、だけど…
玄関には見たことのない、女物の靴。
少なくとも、私の靴ではない。
………まさか、ね?
イヤな予感しかしないけど、
私は中へ入り、リビングのドアを開けた。
「あれ、美鈴じゃん。」
………やっぱね。


