「じゃーね、二人とも。」
「うん、バイバイ。」
私は二人に手を振り、
貴也は車を発進させた。
横目で前の貴也の家をちらっと見て。
「大きな家だったんだね。」
「あぁ、そうだな。」
もうしばらくしたら
あそこには違う家族が入って
違う時間が流れていくんだなぁ。
「ちょっと寂しい?」
「まぁ、ちょっとはな。
俺んちじゃなくなったんだな、とは思う。」
「なら売らなきゃよかったのに。」
「誰か住まないと
家がかわいそうだからな。
いつまでもあそこで甘えてられねーし。
あそこにすんでると
佐藤さん迎えに来てくれねーし。
空き家にはしたくなかったんだよ。」
「………そっか。」
大切だからこそ、かな。


