それからピザとサラダを注文して
長曽我部さんは仕事の話をするわけでもなく
外を眺めていた。
「いいよな、美鈴は。」
「なにが?」
「学歴なんか関係ないって思えて。」
「あぁ、弘希に進学しろって押し付けたから?」
私がそういうと
長曽我部さんは目線を外から
下へと移した。
「でもさ、人と違う生き方をするって
楽ではないでしょ。勉強はできないけど
私は私なりに努力してきたと思ってるよ。
きっと進学したらいろんな道が開ける。
選択肢があるって幸せなことでしょ。
私は親にそうやって選択肢を広げてもらうこと
なかったから素直にうらやましいよ。
私にはここで頑張るしか選択肢がなかったから。
それに、弘希が進学するって決めたなら
それでいいんじゃない?
イヤイヤ進学するのは私もどうかと思うけど
でも、決めるのは自分自身だから。
他の人ができることは
選択肢を広げてあげることだけ。
自分の意思で選んで決めてくからこそ
人生って楽しいもんでしょ。
弘希が自分で選んだ人生なら
それでいいんじゃないの?
長曽我部さんは親として
してあげられることをしただけじゃん。」
「………なんか、美鈴に励まされるとか
俺情けねー。」
「はぁ?」
「でも、やっぱり美鈴は俺の妹なんだな。」
「え?」
「俺が高3の時、父さんに言われたんだよ。
親ができることは選択肢を増やしてやることだけ、
あとは自分自身で決めていけ
それが人生の醍醐味だろって。
似た者親子だな。」
「はは、そっか。」
「大学進学したのも、会社継ぐってことも
全部自分で決めたことだからな。俺は。」
「なんとなーく送ってきた人生だったら
失敗を人のせいにして、後悔して
きっと楽しくない人生だったよ。
私もそうだったもん。」
親を憎んで、生きてるのが嫌になって
あの頃の自分は本当に嫌い。


