居場所をください。




「最初の頃は発声はしねーし

腹筋もろくにできねーし

歌はいいのに基礎がなってなくて

本当に素人を連れてきたのかよ

ってまじで頭抱えたけど

そんな素人でもここまでなるもんなんだな。」


「継続は力なり、ですね。」


「五十嵐の歌を初めて聞いたとき

宝の持ち腐れだなと思った。

良い才能持ってんのに、

今まで放置してたのかよって。


五十嵐は持ち前の才能で

拾われてきたのかもしれないけど

歌手としてデビューして

ここまで来れたのも、

これから先のことも

全部お前の努力の証だからな。

忘れんなよ。

どんな才能を持ってたって

努力なしでは咲かない花なんだからな。」


「………はい。」



私はそれから黙々と腹筋をし、

15分で背筋まで終わらせた。


「なんで背筋までやるんですか?」


「きれいな姿勢を保つためだな。

歌には姿勢も大事だからな。

でも五十嵐はよく鍛えてるよ。

他のやつはもっとやらせるけど

五十嵐は言わなくてもやってくるからな。」


「元々運動は好きなので。」


最後にストレッチをして、

ようやく私は先生と発声を始めた。