「咲さん…」
「大丈夫?」
「あ、はい。私は…」
「あの子、事務所内でもアイドル界でも
ぜんっぜんいい評判聞かないの。
仕事なめてる。アイドルなめてる。
先輩をたてようともしない。
上下関係皆無。いつも自分が一番。
だから一回ガツンと言いたかったの。
本当はもっと言いたかったんだけどね。
美鈴ちゃんが出てったあとに
あの子が出て行って、長曽我部さんが
あいつ、美鈴のこと嫌ってるんだよ
って言ってたから追いかけてきちゃった。
ごめんね?」
「いえ、ありがとうございました。
私なんにも言えなくて…」
「思いは言葉にしなきゃ伝わらないよ。
大切に思ってるんでしょ?」
「………はい。」
「ならちゃんと伝えなきゃね。
伝えたい人に伝わればそれでいいんだよ。
たとえそれでも関係が戻らなくても
美鈴ちゃんの中でなにかひとつ
解決するんじゃないかな。」
「………はい。」
「ま、ライバルで売れてる美鈴ちゃん妬むのは
仕方ないことだけどね。
私もそうだもん。」
「え?」
「羨ましい限りだよ。
長曽我部さんがマネージャーで
佐藤さんがマネージャーで
彼氏と同棲してることまで公表してて
私たちより売れてて。
もう妬みがすごいよ。後輩に抜かれちゃって?」
「………すみません。」
「でも、ないものねだりなんかしてても仕方ないから。
美鈴ちゃんのいいところいっぱい知ってるから
嫌ったりなんかできないしね。
それに、その結果が伴うくらい、
努力してることも知ってるもん。
あの長曽我部さんと松野くんが認めてくらいだから
きっと私が知らないところでの努力だって
してるだろうしね。」
咲さんはそういって
可愛く可憐に微笑んだ。
「早く戻ろ?
長曽我部さんも心配してるし。」
「え!で、でもまだトイレに…」
「えー?もう遅いなぁ。」


