居場所をください。




「弘希は親のために、って思ってるのかもしれない。

早く大人にならなきゃ、って。

でもさ、弘希のお母さんも、長曽我部さんも

弘希がおばさんを想っているように

二人も弘希のことを想って言ってるんだよ。


前もいったけど、本当に弘希がやりたいことがあって

大学にいく必要がないならそう言えばいい。

だけどさ、そうじゃないならおとなしく大学いくのも

親孝行なんじゃないかな。」


「……美鈴には関係ねーだろ。」


「そうだね。関係ないね。

だけど忠告はしとく。

早く大人になるのは思ってるよりも辛い。

きっと弘希はまだ甘えてる。

どこかで、親が何とかしてくれる

どこかでそう考えてる。

甘えられる環境なら甘えてなさい。

18歳の私たちに"責任"は重すぎる。

本当の意味なんてなにもわかってないんだよ。」


「責任…?」


「私は一人じゃなにもできない。

なにもわからない。知らないことばかり。

だから私は、長曽我部さんには

ずっとそばにいてほしい。

大人になって、お金を稼ぐようになって

いろんなことを自分でやらなきゃいけなくなって

そうするとわからないことがいっぱい出てきて

一人じゃ不安で仕方なくて

そんなときはいつも長曽我部さんがいてくれた。

きっと、これからも。


私たちガキにはわからないことばかり。

まだまだ学ぶことはたくさんある。


だからさ、早く働いて家出るなんて

寂しいこと言わないでよ。


まだろくに頭も下げることができないガキは

無理して大人になる必要なんてないんだよ。

……弘希はまだ大人になることなんかできない。

親の思いに気づくことができない弘希は

またまだガキのままだよ。」


「美鈴は大人なのかよ。」


「私は大人になんかにならない。

ずっとガキのままでいたい。

自由でわがままな私でいる。

つまんないもん、大人なんて。」