「来るって?」
「うん。
15分後に神宮前だって。
もう行くね。」
「じゃあ俺送るわ。」
「別にいいよ。」
「美鈴、すぐナンパされるし。
コアなファンに誘拐でもされたらどうすんだよ。」
「されないと思うけど。」
「とにかく送るから。
さゆ、こいつ送ってくるし
ここで待ってて。
俺、また戻ってくるから。」
「別にいいってば。」
「行くぞ。」
私の話、聞いてます?
「ありがとうございましたー。」
結局高橋に腕を掴まれたまま
私はお店を出た。
「さっき気づいたんだけど
誰かが美鈴をつけてる。」
「は?」
なにそのドラマみたいな展開は。
「過激なファンとかストーカーとか
そういうのいるんじゃねーの?
お前は歌手なんだから
そういうのに遭ったっておかしくねーだろ。」
「…まさかぁ。」
「それに、彼氏に美鈴をちゃんと送れって
すげー形相で頼まれたし。」


