居場所をください。




「五十嵐さん、こちらへ。」


「あ、えーと…橋本さん!

ありがとうございます。」


「お連れ様もどうぞ。」


沖野さんのマネージャー、

橋本さんが柵内側へと入れてくれて

私たちは裏側へと向かった。


「こちらからも出られますので、

もうしばらくたってから

こちらから出られてください。」


私たちは裏側から、

正面出口へと繋がる通路へ連れてこられた。


「それと沖野から、

お花ありがとうと言付かって参りました。」


「いえ、私といただきましたので。

私からもお花とチケットありがとうございますと

お伝えください。」


「はい、必ず。」


なんか橋本さんはマネージャーというより

執事さんみたいだ。

言葉遣いもとっても丁寧。


「では私たちはこれで。

ありがとうございました。」


私たちは橋本さんに頭を下げて、

一般通路へと戻った。


「会わなくていいのかよ。」


「ライブのあとって結構脱力してて

私が会いに行っても迷惑になるだけだから。

それに高橋との約束もあるしね。」


私は深々と帽子をかぶり、

外は出る前にトイレで服を元に戻し、

堂々と正面出口を出た。