とにかく暑いし荷物も多いから

私は荷物はとりあえず洗面所に置いて

貴也を通りすぎてリビングに入った。


涼しい涼しいエアコンの風を感じてると

後ろから貴也の体温に包まれた。


「ごめん。

美鈴が帰ってこなくて動揺した。

責めるつもりはなかった。」


「……わかったから。」


「美鈴は俺を置いてったりすんなよ」


その言葉には

幼いときに父親を亡くした悲しさ

17歳で母親も亡くして

ひとりぼっちになってしまった貴也の

悲痛の叫びのようにも聞こえた。


「…ばかじゃん。

私から離れるわけないでしょ?

ここは私の家だし、貴也の家だもん。

絶対帰ってくるよ。


…………そろそろ離れて」


私がそういうと

貴也は小さく小さく舌打ちをしたような気がしたけど

気づかないふりをしてあげて

今度は私から貴也に抱きついた。


「大丈夫だよ。

貴也はもう一人にしないから。」