居場所をください。




で、カラオケついたけど……


「すみません、満室です。」


……まじすか。


「まぁ夕方だしな~。」


……まぁ前のバイト先も

確かに夕方は満室だったね。

甘くみてたよ、ここ渋谷。


「お待ちになられますか?」


「どのくらい待ちます?」


「30分くらいでご案内できます。」


「なら待つか。」


「いいの?」


「歌いたいんだろ?

いいじゃん、座ってれば。」


「ありがと!」


「じゃあこちらにお名前を。

フルネームでお願いします。」


…………フルネーム…。



ペンを握るも、貴也はその言葉に固まった。

……ま、仮名でいいと思うよ…。


「あれ?美鈴ちゃん?」


名前を書くのに戸惑っていると

横から呼ばれた。


「あ、やっぱ美鈴ちゃんじゃん!」


「颯太!

久しぶりだね。」


受け付けすぐ横にあるトイレから

颯太が出てきた。