居場所をください。




「美鈴も言われたろ、役が決まったときに。

細くて美人系で色白で………とか。

貴也もそう。目がくりくりのかわいい見た目。

そんで背が平均より少し高い。

あいつもそうなんだよ。

黒髪で、背が小さくて、かわいい系の女。

美鈴よりは少し肉付はいいけど病弱そうなあの女。

ただそれだけのことだよ。

ちゃんとオーディションでとったのは

矢島将太くらいじゃねーの?」


………へぇ、そうなんだ…。


「で、なんで長曽我部さんが嫌われてるんですか?」


「中学の頃まであの女は

スクール生だったんだよ。

だけどすぐに休むし、歌は下手だし

なんか抜けてるし記憶力悪いのか

ダンスも全然覚えねーし

なにより染まりやすいやつだから。

染まりやすいやつは自分を見失う。

まさに今、自分を見失ってるしな。

全体的に向いてねーんだよ。

親に甘やかされてるしな。」


「あー、なるほどー。

まぁ俺も昔は似たようなもんでしたけどね。

まだ長曽我部さんが会社に来る前の話ですけど。」


「貴也も?」


「そ。天狗になってたし。

そうするとさ、スタッフとかに嫌われて

一気に仕事が来なくなって

このままじゃダメだなって気づいて

俺はその時社長がいたから立ち直れたけど

あそこまで叱ってくれる人がいなかったら

俺はあそこで消えてただろうな。」


「………そうだな。

間違ったときに叱ってくれる人がいねーと

どんどん道をすみはずしていく。

だけど、叱ってくれる人がいたとしても

その熱意が伝わらなきゃ意味がない。

あの女にはそれを受け止める器がない。

打たれ弱いんだよ。」


………そっか。

私は……私はどうなんだろう。