「でもなんで敗けを選んだわけ?」
「敗けた方は引退する約束だったから。」
「……美鈴は引退してねーじゃん。」
「俺が言ったんだよ。
そんな勝負で美鈴を辞めさせるなら
この会社は終わりだって。
ここで歌手を続けたいなら
美鈴にはここで稼いでもらわなきゃ
Aプロは潰れるってな。
今は貴也も復活して安定してきたけど
貴也がいなくなってからは隼也と美鈴、
二人しかいなかった。
二人がいるから黒字だっただけど
美鈴までいなくなったら大打撃だったんだよ。
あいつらに美鈴くらいの売り上げを出せるならいい。
だけど美鈴までは到底届かない枚数で
オリコン順位も低い。
美鈴がうちをやめても絶対スカウトが来る。
美鈴がいなくなって、貴也も正式に抜けたら
うちはかなり厳しくなった。
あんなやつらがどう頑張ったって
美鈴に勝つことなんか出来ねーんだよ。
美鈴が負けることはできてもな。」
「………なるほど、そういう意味だったのか。」
「まぁ主役は取られちゃったけどね。」
「あれは見た目判断だからな。」
「見た目?」


