居場所をください。




「失礼しまーす…」


私は恐る恐る中へ入り、

"五十嵐美鈴様"と書かれた席に座り

置かれていた書類に目を通した。


「美鈴?」


へ?


「貴也!え、なにしてんの?」


「いや、こっちのセリフだけど。」


と言いつつ、隣の席に座る貴也。


「そこ貴也の席じゃないよ。」


「俺はあっち。

別にいいよ、まだ始まんねーし。」


「………ってことは共演ってことだよね?」


「みたいだな。

美鈴が読んでた本ってこの映画だったのか。」


私かなり驚いてて軽くパニックなのに

なんでこの人はこんなに落ち着いてるの。


「え、と…主役の二人はまだなんだよね?」


「そうだな、空席。

名前見たけど女の方は聞いたことないやつだな。」


「矢島くんの相手の子だよね?」


「そう。

新人かなんかかな。」


なんかってなんなの。


「貴也はどの役?」


「矢島将太の友達役で、水嶋哉斗?とか言うの。」


あー、赤髪だね、確かに。

やっぱり不良役なのか。


「美鈴は?」


「私は病気で死ぬ役。

まぁ矢島くんの元カノ役ってとこ?」


「ふーん。」