「もうこっちから電話しようかな。
今たぶん打ち上げ中だし忘れてるのかも。」
「打ち上げってツアーの?
美鈴がここにいんのに?」
「うん。
でも今なら長曽我部さんが
あんだけ帰れって言ってた意味がわかるよ。」
貴也に会えるなら打ち上げ
私抜きでも全然いいよ。
「俺か。
なんかごめんな。」
「ううん、いいよ。」
嬉しいし。
ずっと会いたかったもんね。
「ね、みんな知ってたの?
貴也が私のところに来ること。」
「まぁ長曽我部さんと社長と
佐藤さんと隼也とマスターは知ってるかな。」
「そうだ、あのハヤシライス…」
「なに?」
「今日のライブのケータリング
ハヤシライスだったの。
あれ、マスターのハヤシライスだった。」
「あぁ、そういうことか。
俺、前に長曽我部さんに聞かれたよ。
俺と美鈴の思い出の味はあるかって。
だからじゃね?」
……なるほど、そういうことか。
あの人はどこまでも私の心を振り回すね………


