居場所をください。




「とりあえず美鈴はこれから打ち合わせだし

もう帰るから。

佐藤も行くぞ。

お前らもさっさと帰れよー。」


長曽我部さんがそういい、

私は車へと乗せられた。


「とりあえずCDセット!」


「また俺の車のHDDに入れんのかよ…」


「いいじゃん、別に。

はい、早く。」


「俺はお前の奴隷じゃない。」


帰ったらパソコンにも入れて

スマホにも入れよーっと。

ウォークマンにも入れて早く覚えよ。

沖野さんに会ったらサインしてもらおう。


そんなことを考えていたら曲が流れた。

思っていたより結構強めのロック調。

あんな小さくてかわいい人が

こんなかっこいい歌、歌うんだよ。


ほんと憧れる。かっこいい。


「……………本当は言っちゃダメなんだろうけど

沖野さん引退するんだって。」


「え?まじで?」


「うん。」


佐藤さんは別の車だから

口の堅い長曽我部さんにだけ、

沖野さんの話をした。


「もー、ショックでかすぎて

なんにもやる気なくなる。」


「じゃあさっきの空が落ちるって

沖野さんの時代のことだったのか。」


「だろうね。」


「あんな売れてる人がな……」


はぁー…今年いっぱいか…。

もっといっぱい一緒に仕事したかったな…。