「絶対来るよ。
美鈴ちゃんの時代が。」
「え、いや…私なんか…」
「そんなことないでしょ。
もう来つつあるよ、美鈴ちゃんの時代。」
「……そうですかねぇ…」
「うん、大丈夫大丈夫。」
そこが私の居場所になるのかな。
まだ見たこともない景色なんだろうな。
沖野さんが見てきた景色か……
「実はね、私結婚するんだぁ。」
「……えぇ!?
だ、誰とですか!?」
「一般人だよ。」
「えぇ!?」
「ふふ、どうやって知り合ったとか
気になったでしょ。」
「え、ま、まぁ…」
「お母さんと田舎に戻ったとき
ずっと仲良かった人。
こっちで再会したの。それでね。
その人は私を芸能人扱いしないから。
私は結婚して、子供もほしいし。
だから……」
「……………引退、ですか?」
「はは、そうだね。」
「え、嫌です!」
私がそういうと
沖野さんは優しく微笑んだ。
「ありがと。
でも私ずっとほしかったんだ。
普通の生活が。
みんなが見てる、よくある景色を
私も見たくなったの。
夏のイベントで発表して、
年末のライブで引退。」
「……………決定ですか?」
「うん。
社長がやっと許可してくれたから。」
「……そうですか。
じゃああと少しなんですね…」


