「さて、ついた。
ここだよ。」
車が停まったのは都心から離れた郊外の
小さなかわいいお店。
「"みさと"?」
「ここねぇ、私のお母さんのお店なの。」
「え?」
「いろいろあったけど
大人になって和解もして、
今では普通の親子なの。
ま、ここにいるときは親子じゃなくて
店員と客なんだけどね?」
沖野さんは優しく微笑んで
お店のドアに手をかけた。
「いらっしゃいませー。」
おそらくこの人が沖野さんのお母さん。
あまり生活感を感じさせない、きれいな人。
「お好きな席へどうぞ。」
そこにいる女の人は本当に店員さんで
沖野さんもただの客。
本当に親子?と疑いたくなる。
「ここ、座ろ。」
「はい。」


