「それから私は社長の言うことを聞いて
出会って半年、20歳で歌手としてデビューしたの。
デビュー曲はそんな売れなかったけど
それでも順風満帆な歌手人生を歩んだ。
私は社長とずっと一緒に頑張った。
だからかな、デビューして2年目で
私と社長は出来てるって噂されるようになったの。
ほんとはそんなんじゃないけど
社長は決して私から離れないし
私も、社長なしでは生きていけない。
確かに必要な存在ではあるの。
だけどあそこにいると周りの目ばかり気になって。
私は苦労せずに売れたと思われてるから
私を嫌う人も多いしね。
だからあそこにはいたくないんだよね。
社長もやりにくいだろうしね。」
「……そうだったんですね…」
「それでも私にだって彼氏はできたし
熱愛報道は出た。
だけど破局する度にまた
社長とのことを噂されてさ。
社長も社長で独身だしね。
もうすぐ40歳なのにさ。
こめんね、こんな話しちゃって。」
「……私、わかった気がします。
なんで私が沖野さんに惹かれたのか。
沖野さんの歌詞がグサグサ刺さるのか。」
「……………似てるでしょ?」
「似てます。
私も長曽我部さんに拾われましたから。
それに長曽我部さんは次期社長。
ほんと、そっくりですね。」
「初めて美鈴ちゃんをテレビで見たとき
美鈴ちゃん、なんで歌手になったか聞かれてて
その時"居場所がほしかったから"って答えてて
私もそれにすごい共感したんだよね。
ここにいていいよ、っていう場所。」
「はい、そうです。
それに…」
「もう、そんなに頑張らなくていいよって
私を認めてくれる人が欲しかった。」
「え…」
「違う?」
「いえ……そうです。
全くその通りで…」


