翌日ー
私は初めて違う芸能事務所へ入った。
「あ、スタッフさんが待ってる。」
「五十嵐美鈴でいろよ。」
「はーい。」
私は顔を少しだけ上げ、
口角もほんの少しだけ上げ、
五十嵐美鈴を作る。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
私は長曽我部さんの次に
スタッフさん……らしき人に挨拶をする。
「こんにちは。
すみません、お呼びだてしまして……」
「いえ、こちらこそ
今回はうちの五十嵐にお声がけ、
ありがとうございます。」
「いえ、沖野のご指名ですので。
ぜひ五十嵐さんに、と。
では、こちらへどうぞ。
あ、こちらは入館証になります。」
「ありがとうございます。
美鈴、これつけろ。」
「はい。」


