「到着。」
外の景色を眺めながらボーッとしていると
マンションの前で車が止まった。
「ありがと。」
「明日は10時に迎え来るから。」
「了解でーす。」
「じゃ、おやすみ。」
「うん。おやすみ。
お疲れさまでした。」
明日は沖野さんの夏フェスの打ち合わせか。
何曲歌うんだろう。
ま、沖野さんのステージに立てるだけで
ハッピーだけど。
えーと、鍵は……あったあった。
エントランスのドアを開ければ
次はエレベーター待ち。
ここでこうしてるときに
何回も貴也と会ったな。
もうそんなことすらないんだもんな。
あの部屋はもう貴也の部屋ではなくなってしまったから。


