居場所をください。




「よし、行くぞ。」


私はハルと共に長曽我部さんの車へと乗り込む。


「ハル、私がいいっていうまで

頭下げてて。」


「なんで?」


「いいから。

早く。」


「あ、うん。」


「行くぞ?」


ハルが隠れたのを確認して

車が発車する。


そして外から聞こえる私の名を呼ぶ声に

私は窓を開けて応える。


『キャー!』という歓声が聞こえなくなる待て

私は手を振り続けた。


「ごめんね、ハル。

もういいよ。」


「……………出待ち?」


「うん。

こんな時間まで待っててくれるなんてね。」


シカトして帰るなんてできないから。


「美鈴ちゃんは優しいね~。」


「優しい?」


「うん。

何にもしないで通りすぎる人だっているし。」


「優しいなんてはじめて言われたかも。

ふふ、ありがと。」