それから私は涙を拭き、 手を合わせた。 貴也をひとりにしないと誓って。 「泣いたらお腹すいた。」 「よし、行くか。」 「あのね、その前に行きたいところがあるの。」 「どこ?」 「海。」 私たちは車で海に向かい、 私だけ車から降りた。 そこは貴也がいなくなったときに来た海。 長曽我部さんと見た伊豆の海とは違い、 きれいでもなんでもないけど 空っぽになれるんだ。 また笑えるように。 また頑張れるように。 また歩き出せるように。 止まってなんかいられないよね、私。 前に進まなきゃ。