「そろそろ行こう。」
「え、もうそんな時間?」
「そんな時間。
ほら、コート。」
「あ、ありがと。」
長曽我部さんはテレビを消し
荷物をもって部屋を出た。
「また来るね。」
私は海と温泉に別れを告げ
ウィッグとハットをかぶって
長曽我部さんの後を追った。
「おせーよ。」
長曽我部さんは早いもので
もうお会計。
「長曽我部さんが早いんだよ。」
おかげでウィッグかぶるの
ばたばたになっちゃったじゃん。
まったく。
「変じゃない?」
「大丈夫。」
「よかった。」
「お世話になりました。」
会計を終えた長曽我部さんがそう言い、
私たちは車へ向かった。
「ありがとね。」
「なにが。」
「お金。」
「あぁ、そこかよ。
別にいいけど。
年下の女で、しかも妹に
金払えなんて言わねーし。」
「そうだけどさ。」


