居場所をください。




「美鈴。」


初めて私の名を呼ぶ彼の声はとても優しくて

私はまた涙を流した。


「変な勘違いはすんなよ。」


………………。


「それ、今言う?

激しく空気読めてないけど。

しかも勘違いって、

亜樹が私に恋心を抱いてないことくらい

ちゃんとわかってますけど。」


「あ、そ。

ならよかったわ。」


「ったくー。

すっかり涙も止まりました。」


私は亜樹から離れた。


「もういいわけ?」


「うん、ありがと。

もうすっきりしたよ。」


また明日から頑張れそう。


「もう辛そうに笑うなよ。」


「辛そうだった?」


「たまにな。」


「はは、そっかぁ。

仕事の時は完璧だったと思うのになぁ。」


「歌詞にも滲み出てるくせにな。」


「あれ、新曲もう聴いた?」


「CM。」


「そっかぁ。

でもCMで流れてるのは

貴也のことじゃないよ。」


「親だろ?」


「なんだ、わかってるんじゃん。」


会いたくて会いたくて仕方ない。

たった一言でいい。

"愛してる"とそれだけ聞かせてほしかった。