居場所をください。




「ずっと我慢してきたのに

崩さないでよ…。」


溢れてしまった水は

もう戻すことは出来ない。


「ほら、泣けんじゃん。」


亜樹はいつもの声でそう言った。

その瞬間、亜樹の香りがふわりと香り

私は亜樹の温もりに包まれた。


「我慢しなくていいだろ。

会いたいなら会いたいって言えよ。

泣きたいなら泣けよ。

強がってばっかいねーで

お前も、少しは強くなれ。

素直になる強さを持て。

泣きたいときは泣けよ。

一人で寂しがってんなよ。


お前はもう、一人じゃないだろ。

孤独を味わうなよ。」


「亜樹…。」


「泣いていい。

俺はここにいるし、

お前はもう一人じゃねーよ。

泣いたって、崩れたって、

誰かしらいるだろ。

今は俺がいるから。

誰もお前をもう一人にはしねーよ。」


「うん…。」


貴也に会いたくて触れたくて

キスもしたくて仕方なかった。


こんなに人を好きになったのは初めてだから。

だから、大橋さんとのキスのことだって

本当は全力で否定してほしかった。

貴也の口から、ちゃんと聞きたかった。


私は貴也の帰りなんか待ちたくなかったんだ。

ずっと、私は貴也に"おかえり。"って言ってほしくて

貴也に帰りを待っていてほしかったんだ。




それから私は亜樹の胸のなかで泣いた。

ただひたすら泣いて

亜樹はなにも言わずに私を包み込んでいた。