「……………マスターに
スープありがとうって伝えて。」
「おう。」
「久しぶりに飲んで会いたくなったって。」
「なに、親父のこと好きなの?」
「はは、私はこのスープが好きなだけ。
本当に…。」
「ふーん、まぁわかったよ。」
「さーてと、帰ろっかな。
明日も朝から仕事だし。」
私はそういって立ち上がった。
それを見て亜樹も立ち上がる。
「ごちそうさま。
マスターに伝えてね。」
「はいはい、わかったよ。」
「じゃーね。」
私は亜樹と一緒にお店を出た。
「さっさと帰るぞ。」
「もしかして送ってくれるの?」
「……………あのなぁ、
女が夜道を一人出歩くなよ。」
「はは、ありがと。」
「…よく笑うな。
あのスープそんなよかったわけ?」
「…もうね、すっごい幸せ。
早くレコーディングしたいな~。」
「なに。」
「あのスープ、マスターのじゃなかった。
貴也の味だった。絶対。
さっきの誠くんと貴也は幼馴染みで
マスターは貴也の手伝いしてるみたいだし
多分貴也が作ったのをマスターが持ってきたんだよ。
私が仕事で遅くなる日は
貴也が私の部屋でよくつくってくれてたの。」
「そういうことね。」


