「さてと、そろそろ寝るぞ。」
「えー。」
「ガキかよ。
俺明日仕事だから朝病院戻らねーとだし
早めに寝とけよ。
薬は?飲んだか?」
「飲んだ飲んだ。」
「じゃあさっさと寝ろ。
俺ソファでいいから母さんベッド使えよ。」
「ふふ、貴也も男になったのね。」
「意味わかんねーこと言ってねーで
さっさと寝ろ。」
「はいはい、わかったわよ。」
「立てるか?」
「痛み止飲んでるから平気。
おやすみ~。」
母さんはそういって
ゆっくりと寝室に入っていった。
その背中は昔と変わんなくて
母さんがもうすぐ死ぬなんて
まだ実感わかねーよ…。
ピンポーン…
ん?誰だ?こんな時間に…。
モニターを見ると美鈴がいた。
俺は急いで玄関に向かった。
「どうした?」
とりあえず美鈴を玄関にいれた。
「ごめんね、こんな時間に。
布団ないんじゃないかと思って。
これ、よかったら使って。」
そういって俺に毛布を差し出した。
「…これだけのために?」
「風邪引いたら困るじゃん。
撮影、明日もあるんでしょ?」
「さんきゅ。」
「お母さんはもう寝た?」
「さっき寝室に入ったとこ。」
「そっか。
じゃあ貴也もゆっくり休んでね。」


