居場所をください。




「でも、もし今長曽我部さんが

今病気がわかって、あと少しの命ってわかったら

私が長曽我部さんにできることはひとつだから

私はそのためにたくさんのものを捨てても

長曽我部さんのために頑張るよ。」


「できることって?」


「できることっていうか

してあげなきゃいけないことだけど

自分の時代を作ること。

長曽我部さんがずっと言ってきたことだから

もし長曽我部さんがもう長くないなら

長曽我部さんが生きてる間に

長曽我部さんの夢を叶えるの。

そしたら長曽我部さんはきっと

笑ってくれるから。」


「……………なるほどな。」


「なんてえらそうなこと言ってるけどさ

社長は、大切な人ほど、なにもできなかった

っていってたけどね。

ただ絶望的になって、なにかしなきゃ

そう思うのになにもできなかったって。

その人が死ぬ現実が嫌で

信じたくなくて向き合うことすらできなかったって。

社長の奥さんが亡くなる前、そうだったみたい。

ただ泣くことしかできなかったって。


だからどんなことでも

その人のためになにかできたら

それはすごいことじゃないかな。

それが的はずれなことだったとしても

大切な人の死と向き合うこと

その人のためになにかしようとする気持ち

それが大事なんじゃないかなって。


それだけできっと後悔しないから。」



貴也は私の話を最後まで真剣に聞いていた。