居場所をください。




「俺風呂やるわ。

座ってて。」


「ありがと。」


部屋につくなり貴也は荷物を置いて

お風呂の支度をしにいった。


とりあえずお湯沸かそっかな。


あ、貴也のジャケットかけとこ。


リビングについても

結局私は一人で動いていた。



そこへ貴也が戻ってきた。


「ありがとね。」


「俺のジャケットなんか置いとけばいいのに。」


「そんなわけにはいかないし。」


私はジャケットをハンガーにかけて

貴也のもとへ向かった。


「なに飲む?」


「自分でやるって。」


「私のやるついでだもん。」


「……………じゃあ麦茶で。」


「はーい。」


麦茶ね。もう暖かいもんね。


「はい、麦茶。」


「さんきゅ。」


「もう麦茶の季節だね。」


「そうだな。」


……………なんか老夫婦みたい。

麦茶の季節って。渋いな。


ま、私たちらしくていっか。


「美鈴はさ、親が死んでたって知って

どう思った?」


「別になにも思わなかった。

ずっと離れて生きてきたんだもん。

別に変化はないかな。


でもね、約束って一人じゃ果たせないんだよ

とは思ったかな。


必ず迎えに来るといった約束は

誓いはどこにいってしまったのって。


でも考えたって仕方ないよ。

お母さんが限られた人生、

楽しめたならそれでいいよ。

もし私のことが心残りに思ってるなら

私は元気だよって伝えたい。

だからね、たまに幽霊が見えればいいのにって思う。

幽霊でもいいから会いたいから。」


「……………そっか。

じゃあさ、もしまだ生きてて

だけど病気で危篤状態だったらどうする?」


「親が?

んー、どうかな。

やっぱり私は捨てられた子供だから

会いには行くけどなにもしないかも。

でも実際そうだぅたら違ったりして。」