私が目を見開いた瞬間

遥が、私を抱き上げて、ふわっ、と空へと飛び立った。

そのまま遥は私を連れて、周くんの頭上へと飛んでいく。

やり切れない様子で見つめる遥を周くんに、遥は、バッ!と私を放り投げた。


「っ!」


どっ!と私を抱きとめた周くんに、遥は、目を細めて空から叫んだ。


「詠を頼んだぞ、周!」


「!」


驚いて遥を見つめる周くんに、遥は、ふっ、と笑った。

そして、次の瞬間

周くんの背後に金色の障子が現れた。


………あれは……

“元の世界”と“妖界”を繋ぐ神社の扉…!


私は、ばっ!と頭上の遥を見上げる。

ぱぁっ!と、辺りが光に包まれた。

ぐらり、と視界が揺れる。


……!

……嫌………!


このままじゃ、元の世界に帰っちゃう

遥を置き去りにしたまま、帰っちゃう…!


その時

遥の声が辺りに響いた。


「詠!」





私の耳には、遥の声しか聞こえなくなる。


「俺……お前のこと…………」


光がさらにまばゆいものへと変わり

遥の姿が消えていく。

その姿が消える瞬間

確かに、その声は私の耳に届いた。


「好きだった────」


目の前が、一気に闇に包まれて

ぷつん、と意識が途切れる感覚がした。