「でもメロンパンはメロンパンなんでしょ?」

「うん、チョコチップ入りのね」


そもそもメロンパンって、そんなにメロンの味がするだろうか。
メロン果汁を生地に練り込んでいます!みたいな謳い文句の商品ならばするのだろうが。

とりあえず水無月くんは、メロンパンが苦手だと言いながらチョコチップメロンパンを買うくらいなら、ただのチョコチップパンを買えばいいと思う。
朝っぱらから水無月くんとメロンパン論争を繰り広げるつもりはないので、言わないけれど。

理由はさておき、水無月くんが今日も自由でご機嫌であることは何よりだ。
それに私は現在、とても重大な問題に直面していて、正直それどころではない。水無月くんどころではない。


「そうだ瀬戸さん!僕ね、昨日の反省点を家で考えてみたんだけど――」


昨日といえば、半ば強制的に水無月くんと二人で放課後のトイレに幽霊探しに行ったことを思い出す。

放課後で、しかも誰も人がいないのをいいことに、水無月くんは女子トイレに堂々と足を踏み入れて、大声で何度も幽霊を呼んでいた。