先生は私の旦那様

えっー!!嘘でしょ!!
結婚前の娘が今日初めてあった人と同じ屋根の下で二人っきりで暮らすなんてありえない!!


そんな稀美果の気持など知らないというかのように


「馬鹿娘!行くぞ!」と稀美果は直寿に再び引きずられる様に離れへと入る。


この離れは先月建て替えられたばかりだった。


ひょっとしてこの為に建て替えられていたの?
嘘!そんなに前から決まっていたの?


稀美果は愕然としてしまう。

リビングに入ると直寿はさっき八重さんから鍵と一緒に受け取った封筒から用紙を取り出しテーブルに広げ内ポケットからペンを出すと署名をしハンを押した。


そして「お前も書け!」とペンを稀美果へ差し出す。


「えっーこれ婚姻用紙じゃない!? こんなの書けるわけ無いでしょ!!」


「お前が書かないと明日からお前達家族は路頭に迷う事になるぞ!? それでも良いのか?」


「そ、それは困る…」


「じゃー書くんだな!」


婚姻用紙の証人の箇所に両家の父親の署名がされていてあとは稀美果の署名だけだった。


お父様の署名があるという事はこの馬鹿げた政略結婚をお父様も望んでいるという事なのね……


「わ、分かったわよ…」


稀美果は直寿からペンを奪うように受け取り署名した。


「あとはお前のハンだけだな押して役所に出しとくよ。」


直寿はその用紙を折りたたむと封筒に戻した。