ゴールデンウィークがあけた木曜日の朝、廊下を教室へ向かっていると隣のクラスの女の子から直寿の名前が出て来て足を止めると耳を疑う話が聞こえてきた。


「うん! 私も見た黒木先生と綺麗な女の人が親しそうにしてる所」

「あの人彼女かな?」

「いや、どうだろ? 彼女が仕事先まで来て抱きついたりする? 生徒の前でだよ?! もしあの人が黒木先生の彼女だったら、私、黒木先生への見方変わるわ」

「まあねぇ…場所も考えないで抱きつく様な女の人を好きになったりしないよねぇ。でも私も黒木先生に抱きついてみた〜い」


直寿が綺麗な女の人と?……


教室へ向かい自分の席に座ると今度は碧が目を輝かせ興奮して話してきた。


「稀美果おはよう! ねぇねぇ聞いた? 黒木先生と綺麗な女の人が校門前で抱き合って激しいキスをしてたって話! すっごいよね! 生徒が見てる前でキスするなんて、黒木先生って結構情熱的の人なんだね? いつもは冷静沈着な姿しか見てないから驚いちゃった! でも生徒と大人の女性に見せる顔が違うのは当たり前だよね?」

「……それ…本当のはなし?…」


稀美果は顔が強張っていくのが分かった。


「昨日、部活で来てた子達が見たんだって! 私はバスケ部の後輩に聞いたけど、抱き合ってる所を見たんだって! 他にも陸上部の子とか何人も見た子いるらしいよ! 黒木先生がその人の車に乗ってホテルに行ったとか、ホテルの話は盛り過ぎだろうけど、まぁ先生も男だからねその後何にもないなんて無いだろうけど?」



昨日、【知り合いと会ったから少し遅くなる。ごめん食事は要らない。】ってメールがあって直寿は帰りが遅かった。帰りもタクシーで帰って来ていたようだ。


お酒の臭がしたから、飲むからと車は学校に置いてきたんだと思っていた。

知り合いって…… 女の人と会っていたの?……
その人と何していたの?……
私にはしてくれない事を…… していたの?……