楽しい時間はあっという間に過ぎるもので気が付くと時計は22時を回ろうとしていた。


「そろそろ帰ろうか?」


碧の掛け声で私達は帰ることにしカラオケBOXを出ると雨は一段と強くなった様だった。
稀美果はふたりとカラオケBOXの前で別れ家へと重い足を向けた。


「どうせまだ帰って来てないでしょ!」


ここ最近また直寿の帰りが遅いようだった。
稀美果は八重さんに作ってもらった食事を済ませるとお風呂に入りそのままベットに入ってしまっている。
朝も何かと理由をつけ直寿が用意した食事を食べずに家を出ているのでまともに直寿の顔を見ていない。
あと20メートルほどで家に着くという時、雨が降っているにもかかわらず傘もささずにこちらに走ってくる人がいる。稀美果は怖くなり身構えていると街灯で少しづつその人の顔が確認出来る様になりそして走って来た人は直寿だと分かった。


直寿は息を切らし稀美果の肩を掴むと

「良かった無事だったんだな!」

と安堵の顔を見せる。


え?……


しかし、すぐに直寿は激怒した。


「バカヤロー!!電話しても出ないしどれだけ心配かけるんだ!!」


直寿の迫力ある言葉に稀美果は肩をすくめ怯える。
電話は鞄に入れっぱなしだし、カラオケBOXでは歌って楽しんでいたので着信音など聞こえなかった。


え?心配してくれたの?……
もしかして雨の中私を探してくれていたの?……


その時直寿が稀美果の方に倒れこんで来た。


「えっ直寿? 直寿!直寿!!」


直寿の体は熱く稀美果の問いかけには応えなかった。



稀美果は驚いてどうしたら良いのか分からず、とにかく直寿をこのままにはしておけないと思い八重さんに電話をし一緒に直寿を家へ運んでもらった。