稀美果は着替えを済ませると1階に降りダイニングへ入ると今日も直寿は朝食を用意してくれていた。


「おはようございます。」と言い椅子に座る。


すると直寿はカフェオレの入ったマグカップを稀美果に持って来てくれた。


「おはよう。稀美果、昨日は悪かったな連絡もしなくて」

「気にしないで下さい。ちゃんと遅くなると仰って居たのですから。」

「……稀美果その眼鏡どうした?」

「何でもありません。コンタクトが合わなかっただけです。」

「目が悪いなんて聞いてないぞ?」

「そうですか?」

「それは伊達メガネだろ?」

「えぇ目が痛くて充血してるので誤魔化すために掛けてます。」

「ちょっと見せてみろ!眼科に行ったほうが良くないか?」


直寿は心配して稀美果の元へ来ると眼鏡を外そうとした。
稀美果は直寿から顔を背ける。


「稀美果、その眼……」

「大した事はありませんから。それから申し訳有りませんが、私の通帳を返して頂けませんか?」

「何に使う?」

「昼食を買う為にお金が必要なんです。」

「あぁ気が付かなくて悪かった、取り敢えずこれを使ってくれ」


直寿は財布から一万円札を出すと稀美果に差し出した。


「すいません。お借りします。今日は日直なのでもう出掛けます。せっかく食事を用意して頂いたのに申し訳有りません。」

「あぁ気にするな。気をつけていけよ!」


稀美果は直寿と目を合わせる事無くダイニングを出て行く。