大学3年の秋。

私は、来年の教育実習先を探していた。


「稀美果、教育実習先は決めたのか?」


教育実習は一般的には母校へ行く人が多いが、私の母校である星蘭華学園の学園長は私の祖母だから他の先生方がやりにくいと思って母校へ教育実習に行く事は避けようと思っている。直寿もいるし…

だが、教育実習を受け入れてくれる所を探すのは大変みたいで、やっぱり友達も苦労しているらしく母校へお願いして行くと言っている。

私は、受け入れ先が見つからず尚樹に相談したから、

『先輩の勤めてる高校に一緒に行かないか?』と誘ってくれている。


「うん… 尚樹に『百々夢学園か花の季高校に一緒にどうだ?』って言われてるんだよね…どっちかにしようと思ってる」

「はぁ? 百々夢学園は男子高だろ? ダメだ! 花の季高校もダメだ!! 共学だが最近荒れてると聞く。だからうちの高校に来ればいいんだよ!」

直寿は私が教師になる為に大学へ進学を決めた時から一緒に教師として働ける事を楽しみにして居てくれた。勿論私もたのしみにしてる。
そかて大学2年になった頃には

『教育実習はうちの学校に来ればいいからな!』と言っていた。

『私が教育実習に行くと先生方がやりにくいと思うから…良く考える…』と言葉を濁していた。

まさか『直寿が居るからヤダ』とは言えないから。

お祖母様の学園と言う事もあるけどまさか自分の旦那様が居る学校ではなにかとやりにくいと思う。
先日も大学の講義が午後からだったので直寿が忘れたお弁当を学校に届けた時

『稀美果、有難う。』チュッと直寿は私に軽くだがキスをした。それを女子生徒が見ていて大騒ぎになったのだ。
でも直寿は悪びれる事無く『うるさいぞ! 自分の奥さんにキスして何が悪い』と言った。

もし、私が母校へ教育実習に行ったらどうなる事か分からない。


「分かった。うちの学校が来にくいなら、櫻瞳華学園の方に行けば良いよ!あっちなら姉貴が居るから心配ないし、稀美果も心強いだろ?」

まぁ櫻瞳華学園ならいいかな…

直寿は直ぐに手配をしてくれた。

そして5月末櫻瞳華学園へ2週間教育実習に行く事になったのだが……
前日に櫻瞳華学園へ挨拶に行くと学園長室に直寿のお姉さんと直寿が居た。

「え?どうして直寿が居るの?」

「あっ言ってなかったっけ?俺も明日から2週間こっちなんだ。こちの世界史の教師が研修で居ないんだよ。だから俺が応援」

えー嘘!やられた……

するとお義姉さんが
「稀美果ちゃんも大変ね?こんな独占欲の強い旦那で!」と笑われた。

もうー直寿の馬鹿!
明日からの2週間が思いやられる……

多分、この先ずっと直寿に翻弄されるのどろう?

でも、それだけ愛されてるんだと思うと、少し嬉しくなり直寿を見て私は言う。


「あなたの独占欲を受け入れましょう!」





fin…