うん、と頷く。

「琴さんってマドンナって呼ばれてんの知らなかった」

「え」

「俺にとってはシスター、いやエンジェル?」

「やめてよ」

菱沼の口に手を当てる。その手首を掴まれて、掌にキスが落とされた。

「あーこのまま連れて帰りたい。つか、琴さんと仲良くしてる男なに?」

「真壁のこと?」

真壁、と復唱する。きっと三歩で忘れると思う。
手首にも唇が当たった。

「このままだとあれだ、きっと琴さんと結婚するときは土下座することになる」

「そこはもうちょっとプライド持とうよ」

くすぐったいのも相まって笑う。