「クゥン、クゥン…」


羽田くん、起きて〜……か。
まいるなぁ……。



むくっと体を起こしてみると、ドアのところに菅野が立ち竦んでる。
髪の毛をよく乾かしもせずに上がったみたいで、緩くカールされた毛の先からポトン…と雫が落っこちた。


「お前、ちゃんと髪乾かせ!」


一言言ってからその場を離れる。

やり切れない思いはこっちも同じ。
タダでさえ我慢してんのに、あんなカッコ見せんな。


浴室のドアを開けてシャワーを浴びる。
イラつく気持ちとは反対に正直な体に呆れる。


今夜どうすればいいんだ。
俺はもうとっくに我慢も限界なんだけど。



「美結……お前の気持ちはどうなんだよ……」



手を出してもいいのか?
拒否ったりしねぇか?


悶々としながら湯を浴びて出ると、菅野は身支度を整えて待ってた。


「先…行くね……」


ペソも仕事場に連れて行く…と言う。


「大丈夫なのか?誰かに連れてかれたりしねーか?」

「大丈夫。裏口に繋がせてもらうし、時々様子も見に行く」


肩をしょげさせたままで部屋を出て行こうとする。

今夜こいつがここに帰って来ないような気がして思わず声をかけた。


「美結…」


ビクッとして立ち止まる。
ベソを抱く手に力を入れて、くるりと振り向いた。


「何……?」


きゅっと唇を噛む。
どこか覚悟してるような顔を確かめて、さらっと言った。



「今夜は唐揚げな。昨夜のリベンジしようぜ」


敢えて帰って来いとは言わずに希望だけを伝える。
一瞬戸惑うような顔をした菅野は、「うん…」と小さく頷いた。