年が明けて、あっという間に2月に突入した。


年末よりも時間の流れを早く感じるのはきっと、新学期や新年度に向けて周りが慌ただしいせいだろう。


詞織は前よりも少し、眠る時間が増えてきているけれど、危惧していたほど急激に起きている時間が減る事はなかった。


最近俺は少し忙しい。

無事大学に受かった兄貴の引越し準備を手伝わされていたり、友達付き合いが増えたりと、忙しいながらに充実した日々を送っている。


それでも週3日、詞織の所へ行く事だけは欠かさない。


病室をノックしても返事がない事が増えて、話をしている時も眠そうだけれど、眠らないように、眠らせないようにしていた。


「……あと1箇所」


眠い時に間違い探しをやらせるのはどうかと思ったが、負けず嫌いな詞織には効果抜群だった。


時折長い瞬きをしながら、黙々と絵柄を見比べる詞織の横で、もどかしさに耐える。


かなりわかり易い、多分1番目につく間違いになんで気付かないんだよ。


詞織の集中力は切れかかっていて、さっきから頭がぐらつく度にボールペンが顔に刺さりそうで、ヒヤヒヤしてるのはこっちなんだ。


「詞織、眠いなら寝るか?」


眠りたくないと言うから、眠気対策を色々と持ってきているけれど、無理をする必要はない。

赤ん坊みたいにぐずって後で恥ずかしい思いをするのは詞織だ。


「んー…ちょっと寝る。起きたら見つけられるかもしれないもんね」


「俺が丸つけていいだろ、もう」


「だめ。30分したら起こして」


もぞもぞと布団に潜り込んだと思うと、ものの数秒で寝息が聞こえてくる。


覗き込むと、クリスマスに俺がやったホワイトタイガーのぬいぐるみを抱き締めていた。


毎日抱いているせいか、ホワイトじゃなくなってきているから、今度洗濯をしに連れて帰らないといけない。

トントンと背中を叩いて、何をするでもなく病室の天井を見上げる。


真っ白な天井だ。真夏の入道雲を敷き詰めたような白。

詞織は仰向けに寝るとどこまでも白で怖いから、横を向いて寝る癖がついたらしい。


確かに、真っ白っていうのは少し怖い。