生きる。~番外編~




「人間の脳ってのはな、上書き保存なんだよ。

新しいことがあると古い記憶はどんどん奥底にいく。

湊は他にも忘れてることあるだろ。

たとえば親の腹の中のこととか

生まれてきたときのこととか

一歳の誕生日だとか

幼稚園の入園式だとか。」


「そうか、ガキの頃に由茉とどっかで会ってんのか。」


父さんと輝さん、仲良くて

俺らを結婚させたかったくらいだし……


「心臓が弱かった由茉さんが

湊と会える場所なんて限られてるだろ。」


心臓が弱かった……………


「幼稚園とか、学校とか

病院……………?」


「そんな難しく考えんな。」


……………違うのか。


「アメリカでもねーし…」


「簡単に考えろ。

心臓が弱かった由茉さんが

一番いた場所だよ。」


「………そうか、家か。」


どこにもいけない由茉のために

晴輝さんが飛鳥さんたちを家につれてきた

って前に由茉が言ってたな。


「なら行くぞ。」


「いや、待ってください。

俺なにか持っていかなきゃいけないみたいで…」


「それはもっと簡単だ。

湊は由茉さんになんで会いたいんだ?

今、なんで由茉さんに会いたいんだ?」


「……入籍したいから?」


「ならあるだろ。

婚姻届の他に大事なものが。」


「大事なもの?」


なんだ?入籍するために大事なもの……………